建築・建設業界でのCAE解析の活用手法とメリット・デメリット

CAE解析とは

「試作品を作るコストを減らしたい」「製品の問題点を見つけたい」「空気や熱、液体の流れを測定したい」などのモノづくりの現場にある課題を、解決することができる手法のひとつです。
『CAE解析』とは、コンピュータ上で製品やパーツに起きる物理現象をシミュレーションすることで、試作品を作る前に性能に予測を立てたり、実物に発生した不具合の要因を分析・最適な対策の検討などを行う技術のことです。
主に製品開発や設計プロセスで利用され、従来の試作や実験による手法に代わって、効率的かつ正確な解析が可能です。

建築・建設・工事業界において活用される解析手法

構造解析

建築物や構造物の強度、剛性、安定性を評価するために、CAE解析は構造解析に広く利用されています。構造解析では、建物の骨組みや材料の特性を考慮し、外部からの荷重や風圧、地震などの環境条件に対する反応をシミュレーションします。これにより、構造物の安全性を確保しながら、最適な設計を行うことが可能です。

熱解析

建築物の熱性能やエネルギー消費を評価するために、CAE解析を用いた熱解析が行われます。熱解析では、建物の断熱性能や空調設備、日射条件などを考慮して、室内温度や湿度の変化をシミュレーションします。これにより、エネルギー効率の高い建物設計を実現できます。

風流れ分析

都市計画は建物形状や配置、植栽計画をする上で、風の影響を評価するためにCAE解析を用いた風流れ解析が行われます。風流れ解析では、建物の周囲の風流れを可視化して強風対策の検討や快適性を評価し、適切な都市計画を実現します。また、ビルや窓ガラスなどに掛かる風圧を評価することも可能で

建築・建設・工事業界におけるCAE解析導入のメリット

設計の効率化と品質向上

CAE解析を活用することで、建築物や構造物の設計プロセスが効率化され、品質も向上します。従来の試行錯誤による設計に比べ、CAE解析を用いることで、より正確で最適な設計が可能になります。

コスト削減

建築物の設計には、試作・実験・評価を繰り返し行う必要がありますが、CAEの導入によってこれらの工程をPC上でシミュレーションすることができるため、コストを大幅に削減することができます。

安全性の向上

CAEを導入することで、構造物の強度や耐震性の評価を数値化して確認することができます。実験では難しい条件や評価部位も確認することができるため、設計の安全性がより一層高まります。

短期間での評価・検証

試作から実験までの一連の流れを実施するには多くの時間を要します。あらかじめCAEによる検討を行うことで、適切な構造や材料を事前に選定することができるため、実験の回数が大きく削減され、工期の短縮につながります。

建築・建設・工事業界におけるCAE解析導入のデメリット

高度なスキルの必要性

CAEツールを活用するためには高度な技術や専門的な知識が必要です。これに対応できるスタッフを確保するためのトレーニングや採用が必要であり、CAE導入の際の大きなハードルとなることがあります。

モデルの精度と検証の難しさ

CAEで行ったシミュレーションは机上の検討であるため、その結果を現実の物理的な挙動と照らし合わせて検証しなければなりません。検証が不十分な場合、誤ったシミュレーションの結果を設計の根拠としてしまうリスクがあるため、シミュレーションの精度を高める必要があります。

高コストのソフトウェアとハードウェア

CAEツールや必要なハードウェアは高価であるため、これらを導入・維持するには相応の予算が必要となります。そのため、小規模な企業やプロジェクトでは、これが課題となることがあります。

適切なデータの入手と整備

シミュレーションのためには正確な入力データが必要です。実験などにより、これらのデータを収集し整備することが、正確なシミュレーション結果を得るためには重要ですが、知見が少ない場合は難しい場合もあります。